【追悼特集】研心会館館長 横山和正先生を偲んで
インタビュー 「山の全景を見ながら螺旋状に上がる」
TV Show「ヴィク・ターノのニューミッドナイトショー」より
空手家・横山和正先生が2018年5月26日に亡くなられて、一年が経ちました。
コ2では追悼特集として、これまで横山先生の残された言葉や映像をご紹介してきました。
追悼文「イメージと戦い続けた人」、インタビュー01・02・03・04
最終回の今回は、インタビューの特別編として横山先生が生前出演されたTV Show「ヴィク・ターノのニューミッドナイトショー」の書き起こしをお届けします。
また本文の最後に、書泉グランデさんで行う予定だった『沖縄空手の学び方』出版記念講座用に準備した映像をご紹介しています。今回書き起こしたTV Showの映像も入っています。
追悼特集に最後に際して、改めて横山和正先生のご冥福をお祈りいたします。
私がやっているのは「武道の継続」
司会 次のゲストは横山和正さんです。カズと呼んでいいですか?
横山 どうぞどうぞ。もうすでにさっきカズと紹介されましたからね。
司会 ようこそミッドナイトショーへお越しくださいました。貴方は日本から来たのですが、それ以外にもアメリカにも住んでいるんですよね?
横山 はい、そうですね。日本とアメリカを往復して暮らしているんですよ。
司会 それは本当に忙しいね。
横山 少しだけですね。
司会 しかし カズは大変特別な人なんですよ。簡単に紹介すると、彼は単なる空手のグランド・マスターだけではなく、思想家であり、またそのほかにも道場の指導者でもあり、そして映画俳優でもあるんですよ。
そこでわかりやすくブルース・リーと交えてその武芸に対する話をしていきましょう。
カズは空手七段であり、また非常に洗練された人物ですが、その空手に対する考え方や理想について話をしたいと思います。
ブルース・リーとの比較も交えて全米・世界に何かを聞かせてください。
横山 実は、私はブルースとは全く対極的な考えを武道に持っています。
司会 対極的ですか?
横山 そうですね。ブルースは新しい流儀のカンフーを創作しました。しかし、私は新しいスタイルの空手を創作しようとは思っていません。私がやろうとしていることは、長年の歴史に育まれた武道の継続です。
司会 貴方のやろうとしていることは、新しい流儀を創作することではなく、純粋な空手の伝統を継続していくことですか?
横山 そうです。しかし、そこで重要なことは……。
貴方は貴方自身でなくてはならない
司会 それは興味深そうですね。
横山 そうですね、空手の伝統を守りつつもさらに高度なものへとしていくことです。それは伝統は伝統として守る。ブルースは新しい流儀を創った。それは一見対極的に見えますが、全ては行ったり来たりのループの中にあるように思います。全てのものはどこかで繋がっているのです。
もしも、最初のフリースタイルを信じていても、いずれは伝統的なものに着眼しますし、その逆に伝統派から入って行っても、それを続けていく中でどこかで自己の真理に目覚め、自分に適した方法として消化をしてゆきます。
これは非常に重要な事柄です。なぜなら、貴方は単なるコピーであってはいけないし、伝統の奴隷となってならないからです。貴方は貴方自身でなくてはならないのです。
したがって、フリースタイルも伝統はも全ては同じループの中に存在するのです。
司会 そうなんですね。そんな中で貴方の空手は伝統的なんですね。そしてブルースは異なった格闘技を融合したものなのですね。
横山 そうですね。そしてそれは彼には合っていたと思います。しかし、私は指導者でもあります。
司会 貴方は七段でもありますしね。
横山 いや、段は関係ありませんよ。私は気にしていない。
司会 えっ、それは驚きです。なんて謙虚なんでしょう。皆さん、彼は段位なんか関係ないと言っています。
横山 そうですね、武道の修行のプロセスは大変特殊なものなんです。それはあたかも、一つの山の全景を見ながら螺旋状に上がるようなものです。山を横から見れば三角に見えますが、真上から見れば円状になるのです。
司会 なるほど、段階を追って向上するのですね。
横山 だから非伝統も伝統派も繰り返すのです。
司会 カズはどこに道場を持っているのですか?
横山 基本的にはヒューストンですが、セミナーで世界中で指導しています。
司会 ちょっと聞いた話では中国でも指導していたんですよね。
横山 昔ですね。今はあまりいきませんがね。
司会 それから映画の話を聞かせてください。
横山 私は武道家として長く稽古を積んできました。そんな中でよく映画のプロデューサーからアクション俳優への誘いを受けてきました。それが5〜6年前にテキサスのプロデューサーから具体的な誘いを受けてデビューすることになったのです。
司会 中国かどこかからの話もあるんですよね。
横山 そうですね、日本からです。現在話を深めているところです。う〜ん、どうでしょうかね? 私は若くはないからね(笑)。
司会 でも年寄りじゃないよね! いや、でも若いですよ!皆さん、若いと思いませんか?彼!
横山 (笑)
司会 クリスティーナ、リサ、カズに聞きたいことある?
リサ フェイスブックかツイッターはやっていますか?
横山 フェイスブックはKazumasa Yokoyamaです。ツイッターはやっていないです。
クリスティーナ ニューヨークで道場を開く予定はないのですか?
横山 何人かの人たちから誘われていますが、どうでしょう。空手を教えるのは大変なことです。精神性から姿勢まで、身体以上のメンタルな部分まで必要です。道場を開くことは簡単ですけど責任もありますから。
司会 ここで家族のことについて教えてください。ご家族はアメリカですか?
横山 いいえ、家族はアメリカにはいません。
司会 子供さんは?
横山 エティンカに娘がいます。
司会 娘さんがいるんですね。
横山 そうです、ここへ来る前に会ってきました。
司会 何歳ですか?
横山 24歳です。
司会 カズは独身ですよね?
横山 無論独身ですよ(笑)。
司会 それでは最後に将来の活動についての目標や抱負があったらお聞かせください。それが武道でも映画でも、なんでもいいですから。
横山 私は若い頃はたくさん夢があり、選択がありました。しかし、それらも年々非現実的なものや不必要なものを捨て去りました。
歳をとるということは決して悪いことではないのです。洗練されてゆくということです。若い時はエネルギーもあり、たくさんのことがありましたが、今は必要なもののみが残っています。
それは細くはなっていますが、確実なものであると言えます。
今、私の活動は武道を中心に本やDVDを出し、映画の活動も行なっています。そして昨年はヨーロッパにも指導へ出かけてきました。
それらは突然に受ける依頼でもあり、何が起こるかわかりません。発展中です。
人生にはたくさんの夢や目標を持つことができますが、それらも思いがけない出来事で変化します。
今はただただ全て現れたチャンスを一生懸命頑張るだけです。
(特別編 了)
『沖縄空手の学び方』横山和正著
横山和正先生の遺著となった『舜撃の哲理 沖縄空手の学び方』。本書はすでにご自身が重篤な癌に冒され、余命宣告を受けたなか「最後の仕事」として向かい合った一冊です。横山先生が追求し実感した空手の姿がここにあります。
現在、アマゾン、全国書店で発売中です。
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